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依頼者の方から電話で御相談を受けているときに,「どうしてそのようなやり方になっているのですか」ということをよく尋ねられます。
そんなときに,「以前からそうなっていますので」というお返事では私もなんか頼りなくて十分な御説明になっていないな,と思ってしまいます。
根拠を尋ねられたときに一番納得していただけるにはどのような説明を心がけたらよいのでしょうか?
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法律的な問題は,常に根拠を示して御説明することが重要ですよね。
そのために一番良い方法は,条文などの法令上の根拠を示しながらわかりやすく御説明することではないでしょうかね。
実質的な理由と,法令上の根拠による理由,その両方を頭に入れておかないとなかなか説得力ある説明はできないと思います。
私たち法律家も,ある結論を出す場合,根拠を常に頭に入れながら考えていくのですが,何だ,ちゃんと条文があったのか,と思うことが実はよくあることなのです。
また,条文があるはずだ,と思いながらつい六法や例規集をめくるのをサボってしまうこともあるのです。
今回は,公証事務の中で,重要な割にはあまり見たことがない,あるいは,当然知っているはずだが改めて調べたことはない,という条文や法令上の根拠を整理してみましょう。
そこで,最近,依頼者の方とのお話の中で,なぜそのようなことが必要なのか,ということを条文などを示しながら御説明した実例を皆さんにご紹介しましょう。
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目 次
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公正証書の作成や私署証書の認証,株式会社などの定款の認証といった公証人が普段取り扱う仕事は,手数料の金額とか仕事の複雑さに関係なく依頼を受けた順番に行っていますが,なにか決まりがあるのですか?
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依頼者や代理人の方がお見えになったとき,必ず印鑑証明書か運転免許証などでお出でになった方が依頼者や代理人御本人に間違いないかどうか確認させていただいていますが,これはどうしてですか?
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代理人の方が見える場合,どうして御本人の委任状が必要なのでしょうか?電話で公証人に代理人を差し向けるから,と連絡するだけではダメなんですか?
それから委任状の添付書類として印鑑証明書を一緒に提出していただいている根拠はなんでしょうか?
委任する方の旅券や運転免許証の写しではダメなんですよね。
本人の身分証明より委任状に添付する資料の方が厳格になっているのはどうしてでしょうか?
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印鑑証明書の有効期間は以前は6か月だったと思うのですが,今は3か月となっています。印鑑証明書にはこの有効期間は書かれていませんが,これはどこで決まっているのでしょうか?
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公正証書の原本に収入印紙を貼っていただいていますがそれはどうしてですか?
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公正証書の用紙は昔はB4版の大きさでしたが,今はA4版になっています。特に用紙について決まり事があるのですか?
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依頼者の方や公証人が署名押印した公正証書の原本は公証役場で保存しますが,通常,正本と謄本を作って依頼者にお渡ししています。
原本のほか正本と謄本を作るのはどうしてですか? それから時々抄本を請求されるときがあります。これらの書類に法的な効力の違いがあるのですか?
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公正証書や株式会社の定款の原本は公証人が保管することになっていますが,保管期間はどのように決まっているのでしょうか?
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株式会社や一般法人の定款の認証で,東京法務局所属の公証人が神奈川県や埼玉県に本店や主たる事務所を置く株式会社や一般法人の定款を認証できないのはどうしてですか?
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先日,株式会社の発起人は外国人でも構わないのか,というお尋ねがあったとき,それは問題ありません,とお答えしたのですが,そのとき,代表取締役は日本に住所を有していなければならないのか,というお尋ねもあり,これには即答できませんでした。
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会社が発起人となって株式会社を設立する場合,設立する会社の目的である事業が発起人会社の目的の範囲内でなければならない,ということで,それを確認するために定款認証の際,発起人会社の全部事項証明書を提出していただいていますが,これは何故でしょうか?
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株式会社や一般(社団・財団)法人の定款の発起人の署名ですが,手書きのものとワープロやゴム印などの印判で発起人名を記載したものに押印しているものと二通りあるようなのですが,この違いはどこにあるのですか?
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公証人の手数料は誰が決めるのですか?公証人によって違いがあるのですか?
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公正証書の作成や私署証書・株式会社などの定款の認証といった公証人が普段取り扱う仕事は,手数料の金額とか仕事の複雑さに関係なく依頼を受けた順番に行っていますが,なにか決まりがあるのですか?
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そうですね。顔見知りだから早くやってやろうとか,複雑な仕事だから後回し,というようなことはしていません。よほどの事情がない限り依頼された順番に仕事をしていますね。
公証人法施行規則11条に次のような定めがあります。
公証人は,特別の事情がない限り,嘱託の順序に従って事務を取り扱わなければならない。 |
当然のことですが,どの依頼者の方もできるだけ早く公正証書を作ってもらいたい,と思っています。ときには,その日のうちに作ってほしい,とおっしゃる方もいます。しかし,それより前に依頼を受けた事件をそっちのけにして新しい事件を取り扱ってしまうと順番を崩すことになってしまいます。
ですから,特別の事情がない限り,そのことをよく依頼者の方に御説明して順番を待っていただくようにしています。

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依頼者や代理人の方がお見えになったとき,必ず印鑑証明書か運転免許証などでお出でになった方が依頼者や代理人御本人に間違いないかどうか確認させていただいていますが,これはどうしてですか?
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公証人法28条に次のような定めがあります。
1項 |
公証人証書ヲ作成スルニハ嘱託人ノ氏名ヲ知リ且之ト面識アルコトヲ要ス
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2項 |
公証人嘱託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ証明セシムルコトヲ要ス
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公証人にとって依頼者や代理人の方が前から存じあげている方であれば人違いの心配はありませんから特に身分を証明していただく必要はありません。それが1項ですね。
しかし,公証人が依頼者の方を存じ上げない場合は,果たしてその方が公正証書や私署証書の認証を依頼している御本人であるかはわかりませんので,それを印鑑証明書やこれに準ずる確実な方法で御本人であることを証明していただかなければならない,というのが2項です。
この「之ニ準スヘキ確実ナル方法」として例えば運転免許証,旅券,住基カードなど依頼者御本人の顔写真が付いた官公署発行の証明書を提示していただいて人違いでないことを確かめさせていただいています。ですから,健康保険証や民間会社の社員証では本人確認はできません。
他人になりすました人の依頼で強制執行認諾付きの公正証書が出来上がったり,大切な書面の署名の認証をしたら大変なことになりますから人違いでないことを確かめることは大変重要なことなのです。
代理人についても公証人法31条で,28条が準用されていますので,やはり同じ方法で代理人の方にも身分確認をさせていただいています。

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代理人の方が見える場合,どうして御本人の委任状が必要なのでしょうか?電話で公証人に代理人を差し向けるから,と連絡するだけではダメなんですか?
それから委任状の添付書類として印鑑証明書を一緒に提出していただいている根拠はなんでしょうか?
委任する方の旅券や運転免許証の写しではダメなんですよね。本人の身分証明より委任状に添付する資料の方が厳格になっているのはどうしてでしょうか?
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公証人法32条に次のような定めがあります。
1項 |
代理人ニ依リ嘱託セラレタル場合ニ於テ公証人証書ヲ作成スルニハ其ノ代理人ノ権限ヲ証スヘキ証書ヲ提出セシメ其ノ権限ヲ証明セシムルコトヲ要ス
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2項 |
前項ノ証書カ認証ヲ受ケサル私署証書ナルトキハ其ノ証書ノ外官公署ノ作成シタル印鑑又ハ署名ニ関スル証明書ヲ提出セシメ証書ノ真正ナルコトヲ証明セシムルコトヲ要ス 但シ当該公証人ノ保存スル書類ニ依リ証書ノ真正ナルコト明ナル場合ハ此ノ限ニ在ラス
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1項の「代理人ノ権限ヲ証スヘキ証書」というのが委任状のことです。
法律上の行為を御本人に代わって行う権限を与えるのですから,代理人の行為が本当に御本人の依頼どおりなのか,ということを公証人に伝えるために委任状に代理権の具体的内容を書いていただく必要があります。
2項で,私署証書である委任状が認証を受けていないときは,官公署の作成した「印鑑又ハ署名ニ関スル証明書」を提出していただいて委任状が真正であることを証明していただくよう求められています。
この証明書が「印鑑証明書」であり,またいわゆる「サイン証明書」なのです。
ときどき委任状と一緒に御本人の旅券や運転免許証の写しを代理人に持たせて寄こす場合がありますが,旅券や運転免許証では公証人法に定める「印鑑又ハ署名ニ関スル証明書」にはなりませんので委任状の真正を証明することはできません。
委任状の署名欄に実印を押していただき,印鑑証明書でこの印影が実印であることに間違いないということを証明していただいてはじめて委任状が本当に御本人が作成したものであると認められるのです。これ以外委任状の真正を確かめる方法はありません。
この委任状に関する規定は,公証人法60条で私書証書に認証を与える場合にも準用されていますから,代理人が署名者に依頼されて公証人に署名認証を求める場合も,委任者の方は,実印を押印した委任状と共に委任者の印鑑証明書を代理人の方に託していただかなければなりません。
このように,本人の身分証明であれば運転免許証のように通常持ち歩いている簡単な資料で済むのですが,委任状の場合は,もっと厳格に,発行3か月以内の印鑑証明書が必ず求められます。
これは,人違いを防ぐため,ご本人が直接公証役場にお出でになるか,他人を代理人として差し向けるかという場合に分けて証明方法に差を設けているためです。
整理しましょう。
公正証書の作成や私書証書の認証の場合,御本人が直接公証役場にお出でになるのであれば顔写真付きの公的な身分証明書により御本人とこれらの証明書の顔写真を照合することができて人違いは避けることができます。
しかし,委任状の場合,果たして御本人が本当にこの委任状を作成したのか,ということは,署名押印が本物かどうかで判断するほかありません。しかし,私どもは御本人の署名や普段使っている印鑑がどのような物かはわかりませんので,それが御本人のものに間違いないということを公的に証明する制度が必要であり,我が国ではこれが整備されています。それが印鑑証明制度でありサイン証明制度です。そこで,印鑑や署名の真正を証明していただくにはこの制度を利用する以外無いのです。
このように,御本人がお出でにならない場合,代理人に委任した意思内容を確かめるには御本人が作った委任状を拝見するしか方法はありません。この委任状が真正であることを証明していただくためには,ご本人の実印が押捺された委任状と印鑑証明書やサイン証明書を併せて提出していただくという厳格な手続が必要なのです。
委任状が偽造されたり改ざんされて覚えのない公正証書を作られてしまったり,勝手に大事な文書の署名認証をされてしまったら大変なことになりますので,これを考えても,なぜ委任状に厳格な資料が要求されるかお分かりいただけると思います。

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印鑑証明書の有効期間は以前は6か月だったと思うのですが,今は3か月となっています。印鑑証明書にはこの有効期間は書かれていませんが,これはどこで決まっているのでしょうか?
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印鑑証明書のどこを見ても有効期間は書かれていませんね。でも,印鑑証明書の重要性にかんがみてその有効期間は法務省の通達により決められています。
平成17年2月9日に発出された法務省民総第348号という民事局長通達がそれです。
正確には,「民法の一部を改正する法律及び公証人法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う公証事務の取扱い等について(通達)」というもので,ここに印鑑証明書の有効期間についての新たな取扱いが示されています。その内容は次のとおりです。
第4 印鑑証明書の有効期間について
嘱託人の人違いでないこと又は証書の真正であることを証明するために提出する印鑑証明書その他に関する証明書(公証人法第28条第2項及び第32条第2項
(同法第33条第2項において準用する場合を含む。)(これらの規定を同法第60条(同法第62条ノ3第4項において準用する場合を含む。)において準用
する場合を含む。))は,作成後3か月以内のものでなければならない。
この取扱いは,平成17年4月1日から実施するものとする。
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この通達により,公証人が依頼者の方から提出を受ける印鑑証明書の有効期間は3か月ということになりました。
例えば,1月12日に発行された印鑑証明書の有効期限は3か月後の4月12日までということになります。3か月の起算日は発行を受けた翌日の1月13日ということになっていますので有効期限の最終日は4月12日です。

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公正証書の原本に収入印紙を貼っていただいていますがそれはどうしてですか?
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公証人法43条に次のような定めがあります。
公証人ハ嘱託人ヲシテ印紙税法ニ依リ証書ノ原本ニ印紙ヲ貼用セシムヘシ
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これによりまして,公正証書の原本には印紙税法に定めたとおりの収入印紙を貼付しなければならないことになっています。
売買契約や金銭消費貸借契約の公正証書の原本,ペーパーベースで認証した株式会社の公証役場保存の定款などに貼付していますね。

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公正証書の用紙は昔はB4版の大きさでしたが,今はA4版になっています。特に用紙について決まり事があるのですか?
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公証人法施行規則8条に次のような定めがあります。
用紙のA4版化は裁判所の訴訟記録のA4版化に合わせて公証人法施行規則の改正が行われ平成13年3月1日から施行されました。
これにより,今ではほとんどの公正証書はA4版の横書きで書かれるようになっています。
1項 |
公証人の作るべき証書その他の書面(第二項の書面を除く。)の用紙は、公証人役場と印刷した日本工業規格A列四番の丈夫なけい紙とする。ただし、A列四番の用紙に代えて、B列四番の用紙とすることを妨げない。
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2項 |
公証人法第五十七条ノ三第二項(任意後見契約の登記嘱託) の登記の嘱託書の用紙は、日本工業規格A列四番の丈夫な紙を用いなければならない。
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参 考 |
A列四番(A4版) |
A判は、19世紀末ドイツの物理学者オズワルドによって提案されたドイツの規格で、面積が1平方メートルの「ルート長方形」をA0としました。現在では国際規格サイズです。
「ルート長方形」とは、縦横比率が「白銀比」と呼ばれる「縦:横=1:√2」となっており、どこまで半分にしても同じ形、相似形の長方形です。
A4はA0を4回半分にした物=1/16平米のルート長方形で縦横サイズが210×297mmという半端な数字なのは、このためです。
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B列4番(B4版) |
B判は、日本の美濃紙をもとに面積が1.5平方メートルの「ルート長方形」をB0とした国内規格サイズです。
B4はB0を4回半分にした物=1/16平米のルート長方形で縦横サイズ257×364mmです。 |

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依頼者の方や公証人が署名押印した公正証書の原本は公証役場で保存しますが,通常,正本と謄本を作って依頼者にお渡ししています。
原本のほか正本と謄本を作るのはどうしてですか? それから時々抄本を請求されるときがあります。これらの書類に法的な効力の違いがあるのですか?
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まず,原本,正本,謄本の違いを整理してみましょう。
公正証書の原本は,公証人役場で保存されて基本となるものです。原本には,依頼者又はその代理人の署名捺印があり,委任状や印鑑証明書等の付属書類が綴られています。
正本と謄本はいずれも原本の「写し」ですが,単にコピー機でコピーした物ではありません。正本と謄本であることを示す公証人の証明文書が末尾に添付されていて全ページに契印されています。
正本とは,謄本のうち原本と同じ効力があるもので,原本の持ち出しができない(公証人法25条1項)ため,原本保管場所と異なる場所で行使するときに作成される謄本の一種です。
執行証書(債務名義たる公正証書のこと)の正本は,これを債務名義として執行文の付与を受けた上で強制執行をすることができますし,公正証書に基づいて不動産登記をする場合の登記原因証書にもなります。
ですから,執行証書の正本は,公正証書が作成された際,将来強制執行をする立場になる債権者に渡され,債務者には謄本が渡されるのが通常です。
謄本も単なる原本の写しではなく,正本に比べて公正証書の内容の証拠力に変わりはありません。また,遺言に従って所有権移転登記手続きをする場合は,申請書副本と共に相続を証する書面となります。
抄本(正式には「抄録謄本」と言います。)も,例えば,離婚公正証書の一部に年金分割の合意が入っている場合,その部分だけ抄本にして社会保険庁長官(平成22年1月1日からは厚生労働大臣)に提出する,という扱いをされることがあります。
このように,原本,正本,謄本はそれぞれ作成される目的が異なっています。
正本については公証人法47条1項に,謄本については51条1項に,抄本と言われている抄録謄本については53条にそれぞれ次のような定めがあります。
47条1項 |
嘱託人又ハ其ノ承継人ハ証書ノ正本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
【公証人法施行規則16条】
法律行為についての証書の再度の正本の交付を請求する者がある場合に、その正本を要する事由について疑があるときは、公証人は、その者にその事由を証明させなければならない。
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51条1項 |
嘱託人、其ノ承継人又ハ証書ノ趣旨ニ付法律上利害ノ関係ヲ有スルコトヲ証明シタル者ハ証書又ハ其ノ附属書類ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
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53条1項 |
証書ノ謄本ハ其ノ一部ニ付之ヲ作成スルコトヲ得
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2項
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前項ノ謄本ニハ抄録謄本タルコトヲ記載スヘシ
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公正証書や株式会社の定款の原本は公証人が保管することになっていますが,保管期間はどのように決まっているのでしょうか?
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公正証書や株式会社などの定款の原本は公証人役場で一定期間保存されています。
そして,公正証書や定款の正本・謄本などは原本作成時に依頼者にお渡ししていますが,依頼者の方がこれを紛失したり誤って廃棄した場合などは,正本については依頼者又はその承継人,謄本については依頼者やその承継人又は法律上の利害関係のある方であれば公証人役場で公証人が保存している原本に基づいて再度正本や謄本を手に入れることができます。
公正証書や定款の保存期間は公証人法施行規則第27条に定められています。これにより,ごく大まかに言うと,公正証書や定款は20年間保存することになっています。
この保存期間の例外として,履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した公正証書の原本についてはその期限の到来又はその期間の満了の翌年から10年を経過したときは,保存の義務はなくなります。(公証人法施行規則27条1項ただし書)
また,遺言や任意後見契約など保存期間の満了した後でも保存の必要があるものについてはその事由のある間保存しなければならないことになっています。(公証人法施行規則27条3項)
第二十七条 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務
又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したとき
は、この限りでない。
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一 |
証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年 |
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二 |
拒絶証書謄本綴込帳、抵当証券支払拒絶証明書謄本綴込帳、送達関係書類綴込帳 十年 |
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三 |
私署証書(公証人の保存する私署証書を除く。)の認証のみにつき調製した認証簿、確定日付簿、第二十五条第二項の書類、計算簿 七年
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2 |
前項の書類の保存期間は、証書原簿、認証簿、信託表示簿、確定日附簿及び計算簿については、当該帳簿に最終の記載をした翌年から、拒絶証書謄本 綴込帳、抵当証券支払拒絶証明書謄本綴込帳及び送達関係書類綴込帳については、当該帳簿に最終のつづり込みをした翌年から、その他の書類については、当該
年度の翌年から、起算する。
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3 |
第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。
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株式会社や一般法人の定款の認証で,東京法務局所属の公証人が神奈川県や埼玉県に本店や主たる事務所を置く株式会社や一般法人の定款を認証できないのはどうしてですか?
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東京法務局所属の公証人の管轄の問題ですね。
公正証書の作成や私署証書の認証の場合は,依頼者の住所とか物件の所在地には関係なく公証人役場で又は特別の場合に限って出張(東京都内に限る。)によりその取扱いをすることができます(公証人法18条2項)。
しかし,定款の認証だけは本店や主たる事務所が東京都内にある場合に限って認証できることになっています。
これを定めたのが公証人法62条の2です。
第62条ノ2 会社法第30条第1項及其ノ準用規定並一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第13条及第155条ノ規定ニ依ル定款ノ認証ノ事務ハ法人ノ本店又ハ主タル事務所ノ所在地ヲ管轄スル法務局又ハ地方法務局ノ所属公証人之ヲ取扱フ
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先日,株式会社の発起人は外国人でも構わないのか,というお尋ねがあったとき,それは問題ありません,とお答えしたのですが,そのとき,代表取締役は日本に住所を有していなければならないのか,というお尋ねもあり,これには即答できませんでした。
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これまでは代表取締役のうち少なくとも1人は日本に住所を有しなければ法人設立登記はできませんでした。これについては,次の民事局の回答に基づいた取扱いをしていたからです。
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< 昭和59年9月26日民四第四、974号民事局第四課長回答 (昭和59年8月13日東京法務局民事行政部長照会)> |
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●内国株式会社の代表取締役の住所について
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問 |
代表取締役が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記の申請は受理すべきでないと考えますが、いささか疑義がありますので何分のご指示をいただきたくお伺いします。
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回答 |
客月13日付け二法登一第二三八号をもって照会のあった標記の件については、内国株式会社の代表取締役のうち少なくとも一名は日本に住所を有しなければ、当該登記の申請は受理できないものと考えます。 |
しかし,平成27年3月16日からはこの取扱いが改められ,この日以降,内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合であっても当該株式会社の設立登記申請が受理されることになりました。

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会社が発起人となって株式会社を設立する場合,設立する会社の目的である事業が発起人会社の目的の範囲内でなければならない,ということで,それを確認するために定款認証の際,発起人会社の全部事項証明書を提出していただいていますが,これは何故でしょうか?
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株式会社を含めた法人は,その目的の範囲内で権利能力を有しますから(民法34条,大審判大正2・2・5民録19.27),発起人となることがその法人の目的の範囲内であることを要します。
民法34条 |
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
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ですから,公証人はその確認をするため,発起人会社の全部事項証明書(登記簿)の謄本を提出していただいて登記された目的と認証する会社の定款に記載された目的とを比較対照して,会社の設立をすることが発起人会社の目的の範囲内か否かを確認しているのです。
このことは一般(社団・財団)法人設立についても同じです。
ただ,判例は,定款の目的による制限を弾力的に解していて,設立する会社の目的が発起人となる法人の目的に関連していれば足りると解されています。この場合も,「目的に関連」しているか否かを判断するために発起人である法人の全部事項証明書に記載された目的を確認する必要があります。

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株式会社や一般(社団・財団)法人の定款の発起人の署名ですが,手書きのものとワープロやゴム印などの印判で発起人名を記載したものに押印しているものと二通りあるようなのですが,この違いはどこにあるのですか?
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委任状や株式会社の定款を例にとりますと,委任者や発起人の氏名(姓名や会社名・代表取締役名)を万年筆やボールペンで本人が手書きで記載してそのうしろに印鑑を押しているものと,委任者や発起人の氏名(姓名や会社名・代表取締役)をゴム印やワープロで記載してそのうしろに印鑑を押しているものとの二種類がありますね。
本人による手書きのものを狭い意味の署名,ワープロなどで記載した氏名に押印したものを「記名押印」と言っています。
この点について,会社法26条1項に
株式会社を設立するには,発起人が定款を作成し,その全員がこれに署名し,又は記名押印しなければならない。 |
と定めていますので,定款の発起人は,定款末尾の発起人署名欄には,本人による手書きによる署名でなくても記名押印をすればよいことになっています。

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公証人の手数料は誰が決めるのですか?公証人によって違いがあるのですか?
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公証人は,依頼者から手数料,日当及び旅費,送達郵便料,登記手数料を請求できますが,これ以外にはどのような名義でもその取り扱った事件に関して報酬を受け取ることはできません。公証人は公務員とは言っても,国から給与や諸経費を得ているわけではないのですよ。
この手数料の金額等は「公証人手数料令」という政令(内閣が制定)で厳格に定められておりますので,公証人が勝手に手数料等を増額したり減額したりすることは許されていません。
これらを定めたのが公証人法7条です。
第7条 |
公証人ハ嘱託人ヨリ手数料,送達ニ要スル料金,第57条ノ3ノ登記ノ手数料相当額(第3項ニ於テ登記手数料ト称ス),日当及旅費ヲ受ク
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公証人ハ前項ニ記載シタルモノヲ除クノ外何等ノ名義ヲ以テスルモ其ノ取扱ヒタル事件ニ関シテ報酬ヲ受クルコトヲ得ス
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3 |
手数料,送達ニ要スル料金,登記手数料,日当及旅費ニ関スル規程ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム
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