ケーススタディ 公正証書で遺言を作る流れと必要書類を教えてください
        
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私もそろそろ子供たちのために遺言を作っておきたいと思ってご相談に来ました。

自分だけで遺言は作れると本に書いてありましたが,なくしたりしてもいけませんし,法律的にちゃんと効力があるものを作れるか不安ですので,そのような心配のない公正証書で遺言をしたいと思っています。
遺言公正証書を作っていただくための流れや必要な書類を教えてください。


わかりました。
遺言公正証書を作るときも,ほかの公正証書と同じように,まず遺言されるお客様のお気持ちを確認して,必要な書類を整えていただいてから公正証書の作成にとりかかります。

ご依頼を受けてから数日から1週間ほどお時間をいただいて遺言公正証書を作成します。

でき上がったたところで証人2名の立ち会いの下でお客様に内容を確認していただいて間違いないということであれば,遺言者・証人・公証人が共に署名押印して遺言公正証書を完成させ,これをお客様にお渡しするという手順になります。


わかりました。
それで,まず私はどうしたらよいのでしょうか?


一番大切なことですが,誰に,どの財産を相続させるのか,ということをお決めになっていただくということです。
もうお決まりでしょうか?


はい。
ここに来る前に電話で書記の方から,「遺産を誰に何を遺すのかもう決めているなら,簡単でもいいのでメモに書いてきてほしい。」と言われましたので,持参してきました。
ここに書いてきたように

・同居している長男に自宅と土地
・長女に東京都新宿区にあるマンション1室
・この二人に,社会福祉法人△△に遺す100万円を引いた預貯金と現金を2分の1ずつ
・友人の甲山乙子さんに私名義のABC株式会社の株式全部
・社会福祉法人△△に現金100万円

を遺したいと思っています。


わかりました。
子供さんたちは相続人となりますが,甲山乙子様や社会福祉法人△△は法定相続人ではありませんので,これらの方に遺産を遺されるのを「遺贈」といいます。
それでは,ご用意いただく書類を申し上げます。

・3か月以内に発行されたお客様の印鑑証明書
・お客様とお子様たちの続柄がわかる戸籍謄本
・甲山乙子様の住民票写し
・社会福祉法人△△の登記事項証明書(法人登記簿謄本)
・ご自宅と土地の登記事項証明書(不動産登記簿謄本)と固定資産税評価証明書
・新宿区にあるマンションの登記事項証明書(不動産登記簿謄本)と固定資産税評価証明書
・預貯金のある金融機関名と支店名それに預貯金及び現金の総額を書いたメモ
・ABC株式会社の会社概要がわかる資料又は登記事項証明書(法人登記簿謄本)

これだけの書類を集めるのは大変ですが,お気持ちどおりの遺言を作成するためには,遺産や相続人などを正確に把握する必要がありますのでご理解ください。

 ちょっと御説明しておきますと,登記所には,磁気ディスクをもって登記簿を調製し,コンピュータ・システムにより登記事務を行っている登記所と,土地・建物の登記用紙をつづって編成したバインダー式の登記簿を備え登記事務を行っている登記所があります。

この分け方で言いますと,登記簿謄本というのは,バインダー式の登記簿で,登記事項証明書というのは,コンピュータ・システムにより登記事務を行っている登記所が発行する登記簿謄本のことになります。

また,登記簿謄本と登記事項証明書のいずれも,全部事項証明書と現在事項証明書とがありますが,不動産登記については,全部事項証明書を取り寄せるようにしてください。
法人登記については,現在事項証明書で結構です。


これらの書類はどこに行けばいただけるのでしょうか。


普通は目にしない書類ばかりですから,おわかりにならないのも当然ですね。
これらの書類は次のところで手に入ります。

申請手続きのときに,市区町村によって,印鑑や身分証明書が必要であったりなかったり,また委任状の添付書類に違いがあったりしますので,事前に電話で必要なものを確認しておいた方がよいでしょう。

 市区町村の所在地・連絡先等は当役場のWebサイトのリンク(全国自治体マップ検索)から探してください。

印鑑証明書

住民登録のある市区町村役場の住民課等
印鑑登録証(カード)が必要です。このカードがあれば,代理人でも委任状や印鑑が無しで交付を受けられます。
郵送で交付を受けることはできません。

戸籍謄本

本籍地のある市区町村役場の住民課等
自分を証明できるものが必要です。(運転免許証、健康保険証など)
代理人が請求する場合は委任状が必要です。
郵送による取り寄せもできます。

住民票写し

住民登録のある市区町村役場の住民課等
住民票の置かれている自治体が住基ネットに加入していれば,日本中の住基ネット加入市区町村役場から交付を受けられます。
代理人が請求する場合は委任状が必要です。
郵送による取り寄せもできます。
 
法人・土地・建物の登記事項証明書(登記簿謄本)

会社・社会福祉法人・土地・建物とも本店・主たる事務所・所在地を管轄する登記所
請求対象の法人,土地又は建物を管轄する登記所がコンピュータ化された登記所の場合は,登記情報交換制度を利用することにより,最寄りのコンピュータ化された登記所で交付を受けられます。
民間の「登記簿謄本取得サービス」を利用すれば,翌日か翌々日には居ながらにして入手することができます。(当役場のWebサイトのリンク参照)
郵送による取り寄せもできます。

固定資産税評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書

固定資産税評価証明書
 東京都の場合は都税事務所,それ以外なら市区町村役場
 ・代理人が請求する場合は委任状が必要です。
 ・郵送による取り寄せもできます。

課税明細書
 ・毎年市区町村から4月初めに送られてきます。



ずいぶんあちこち行かなければならないのですね。

相続人や遺贈を受ける人を間違いなく公正証書に書き込むために戸籍謄本や住民票が必要だということはわかるのですが,土地や建物の登記簿謄本が必要なのはどうしてでしょうか。
私の持ち家やマンションの住所,というだけではダメなのですか?


土地や建物は,相続が開始されますと相続登記をすることになります。

その登記申請のときに,遺言公正証書を法務局へ提出しますが,遺言公正証書に記載された土地・建物の内容が登記内容と違っていますと相続登記できないことがあるのです。

ですから,遺言公正証書に土地と建物の登記内容を正確に記載する必要があるので,どうしても登記簿謄本(全部事項証明書)が必要なのです。


では,固定資産税評価証明書はなぜ必要なのでしょうか?


遺言公正証書を作るときの手数料は,相続財産の価格をもとにして公証人手数料令に従った基準で算出されます。
ですから,相続させる不動産の価格を客観的な基準で算定するために固定資産税評価証明書が必要なのです。

固定資産税評価額というのは,国が定めた「固定資産評価基準」に基づいて市町村が決定します。
評価額は、土地については公示価格の70%、建物については建築費の50〜70%くらいが目安と言われています。この評価額は原則として3年ごとに見直し、評価替えが行われます。


預貯金と現金の金額をお出しするのも手数料の算定を明朗にするためなんですね。


おっしゃるとおり,預貯金と現金の総額をお出しいただくのも手数料算出のためです。

通帳や預金残高証明書などをお見せいただく必要はありません。
大体このくらいの金額とおっしゃっていただければ結構です。


では,銀行名や支店名をメモ書きでお出しするのはどうしてですか?


金融機関名と支店名を書き出していただくのは,遺言の効力が発生した後,遺言を執行するため,つまり預貯金を引き出したり,口座を解約したりするために必要だからです。

預貯金の場合,遺言が開始,つまり遺言者が亡くなられますと,金融機関は遺産分割協議が確定するまで預貯金口座を凍結してしまいます。

しかし,遺言で預貯金を相続する人が決まっていれば遺産分割の必要はありませんから,相続人が預貯金を引き出したり,口座を解約したりできるはずですね。

ところが,金融機関の中には,遺言があっても,金融機関や預貯金口座が特定されていないことなどを理由に,相続人による預貯金の引き出しや口座解約に応じないところもあるようです。

そのため,遺言公正証書には,預貯金がある金融機関と支店名を正確に記載しておくことをお勧めしています。


甲山乙子さんに遺贈するABC株式会社の株式ですが,この評価額はどのようにして決めるのですか?
経営は順調ですが,上場されていない会社です。


上場株式であれば,株価の時価を調べて株数を乗じた金額で算定します。
御参考までに,当役場のWEbサイトのリンクで「NIKKEI NET 株価・為替」に入っていきますと上場株式の最新の株価がわかります。

上場されていない株式であれば,株式の価格の算定方式として、純資産価額方式、収益方式、配当還元方式、類似会社(又は類似業種)比準方式、取引先例価格方式、併用方式などがあります。

このような算定をすることは一般の株主の方には難しいと思いますので,ABC株式会社の税理士さんにお聞きになったら価格を教えていただけると思います。


相続財産の内容や価格をはっきりさせる方法はよくわかりました。

これをはっきりさせておけば,手数料が明朗になるというだけでなく,子供たちや遺贈を受ける人にとってもどのくらいの価値のものを遺してもらえるのか,ということがわかりますからお互いすっきりしてよろしゅうございますね。

それから,本を読みますと遺言執行者を決めておいた方がよい,とありましたが,それはどういうことでしょうか?


遺言執行者は,民法で,「相続人の代理人」になると定められています。

遺言執行者を決めておかないと,不動産や預貯金が複数の相続人に相続されたとしたら,常にその相続人全員の名義で相続登記や預貯金の引き出しなどの遺言執行をしなければならなくなりますので誰か一人を遺言執行者に決めておくことをお勧めします。

先ほどお話しした金融機関が遺言があっても相続人の預金引き出しや解約に応じない理由のひとつに,遺言執行者を定めていない,ということがあるようです。

遺言執行者は相続人や受遺者自身がなっても構いませんが,必ず遺言で指定しなければならないことになっています。


では,長男を遺言執行者に指定しますのでそのようにお願いします。

それから,先祖のお墓のお守りや仏壇のお守りを長男にしてもらいたいのですが,それも遺言に盛り込めるのでしょうか。
長男には跡継ぎという自覚をしっかり持たせたいものですから。


おっしゃっているのは,祭祀主宰者をご長男に指定するということですね。

民法897条で,「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」という定めがありまして,これに従ってお客様が祭祀主宰者を指定できることになっています。

ご希望に従って祭祀主宰者をご長男に指定する内容を盛り込むことにしましょう。
ただ,祭祀主宰者を指定しますと,財産の遺言とは別個の法律行為になりまして手数料が別に11,000円必要となりますのであらかじめご承知おきください。


わかりました。

それから,最初のご説明にも出てきましたが,公正証書で遺言を作るときは,証人が必要だと本にも書いてありましたが,そうなんですか?


おっしゃるとおりです。
公正証書で遺言をするためには,遺言者であるお客様の真意を確保するため,証人2人の立会いが義務づけられています。
ただ,誰でも証人になれるというわではなく,民法(974条)の定めで
未成年者
推定相続人及びその配偶者・直系血族
遺贈を受ける人及びその配偶者・直系血族
公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人
は証人になることができません。
お客様に適当な証人がどうしても見当たらない場合には,私どもでご相談に応じます。


私が入院した場合などには公証人に病院に出張して遺言公正証書を作っていただけるんですか?


遺言される方が病気や高齢等のために公証役場にお出でいただくことができないときは,私どもが,病院やご自宅あるいは老人ホームなどにお伺いして公正証書を作成いたします。

ただ,この場合には,公証人の日当と,現地までの交通費がかかります。

また,証書の作成が遺言される方の病床においてされたときは、基本となる手数料の額に10分の5の額が加算されることになっています。


それはしかたありませんわね。

そうそう,ついでに教えてください。

老人クラブの集まりで聞いたんですが,「うちの寝たきりのおじいちゃんが遺言をしたい,と言ってるけど,言葉が不自由で,手が震えて字もうまく書けないのでどうしたらよいかわからない。」と言ってる方がいるんです。
そんなときはどうしたらよいのでしょうか?


ご心配なく。
遺言するときに,どの遺産を誰に相続させるか,ということをご自身の意思で決めることができて,それを公証人に伝えられる能力があればそれで大丈夫です。

私ども公証人が遺言公正証書を作成するときに,一番注意を払うのは,遺言される方がご自身の意思で遺言内容を決めてそれを公証人に伝えられる状態にあるかどうか,ということの見極めです。
その確信が得られないときは,遺言公正証書を作成することは控えさせていただいています。
証人のお二人にもその見極めについて十分な注意を払っていただきます。

ですから,寝たきりのご老人でもその判断力がある限り遺言公正証書を作るについてご心配なさることはありません。

字が書けない場合であっても,遺言公正証書への署名は厳格な要件の下で公証人が代署することが認められていますので,遺言公正証書を作成する障害にはなりません。 そのような方は,自筆遺言が作れませんから,公正証書で遺言する以外に遺言を残す方法はありませんね。

また,口がきけない方や,耳の聞こえない方でも,公正証書遺言をすることができます。これらの障害をおもちの方でも,自書のできる方であれば,公証人と筆談や手話通訳で意思を伝えてもらうことができますから遺言公正証書ができるのです。


よくわかりました。

では,私の場合,遺言公正証書を作っていただく手数料はいかほどになるのでしょうか?


先ほどご説明したとおり,遺言に限らず,公正証書作成の手数料は、原則として、その目的価額により定められています。
目的価額というのは、その行為によって得られる一方の利益、相手からみれば、その行為により負担する不利益ないし義務を金銭で評価したものです。

遺言の場合でいえば,相続人や受遺者が取得する利益ということになります。

目的価額は、公証人が証書の作成に着手した時を基準として算定します。


電話で書記の方から,遺産のおおよその価格がわかればメモに書いてくるよう言われましたので持ってきました。


では,それをもとにしてお客様の遺言で目的価格がどのくらいになるかおおよそ出してみましょう。
それで手数料も自動的に決まります。

相続・遺贈の対象 価  格
ご長男に自宅と土地 1500万円
娘さんにマンション1室 500万円
ご長男に預貯金と現金の2分の1 150万円
娘さんに預貯金と現金の2分の1 150万円
甲山乙子さんにABC株式会社の株式全部 200万円
社会福祉法人△△に現金100万円 100万円

となります。
そこで手数料を計算しますと,つぎのようになります。
取 得 者 目的価格 手数料
ご長男 1650万円 23,000円
娘さん 650万円 17,000円
甲山乙子さん 200万円 7,000円
社会福祉法人△△ 100万円 5,000円
合 計 2600万円 52,000円

ということで,取得者別の手数料の合計は5万2,000円になります。

遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になります。
ですから,各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。

また,公証人手数料令19条によりまして,1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円が加算(遺言加算)されることになっていますので、取得者別の手数料合計5万2000円に1万1000円を加算した6万3000円が手数料となります。

これをまとめますと次のようになります。

相続人・受遺者別手数料合計 52,000円
遺言加算 11,000円
祭祀主宰者の指定 11,000円
用紙代 完成した公正証書の枚数によります
合 計 74,000円
プラス用紙代

これに証人お二人に支払う日当・交通費が別途必要になります。

これらは,実際に遺言公正証書が完成して受け取るときに現金でお支払いいただきます。


よくわかりました。
遺言公正証書を受け取った後のことですが,これは誰が保管するのでしょうか?


遺言公正証書には,遺言者・証人・公証人が署名押印しますが,これを「原本」と申しまして,当役場で門外不出として末永く厳重に保管させていただきます。

遺言者であるお客様には,この原本の写しである「正本」と「謄本」をその場でお渡ししますので,これらはお客様が保管なさってください。

ただ,自筆遺言と違いまして,お渡しするとき封印するわけではありませんので,どこかに置いておきますとご家族や他人に見られてしまう可能性がありますので,遺言公正証書の中身を生前には知られたくないとお考えなら厳重に保管してください。


そうですね。仏壇の奥にでも隠しておこうかしら。

ちょっと教えてください。私がいただけるという遺言公正証書の「正本」と「謄本」ってなんですか?


「正本」とは,謄本のうち原本と同じ効力があるものです。原本の持ち出しができないために公証役場以外で公正証書を行使するときのために作成するものです。
例えば,金銭貸借の公正証書を作ってから,債務者がお金を返さなかった場合などには,公正証書の正本を使って強制執行の手続きをすることができるのです。

これに対して,「謄本」は文字どおり,原本の写しです。
ただ,遺言に従って所有権移転登記をする場合は,申請書副本と共に相続を証明する書面として遺言公正証書の謄本を登記所に提出しますので,謄本も使い途があるわけですね。


私が亡くなった後,この遺言公正証書の内容はどのように実行されるのでしょうか?


それが自筆遺言書と遺言公正証書とで大きく違うところです。

封筒などに自筆遺言書が密封されている場合は,法定相続人全員が家庭裁判所にこれを持ち込んで裁判官に検認という手続きを採ってもらわなければなりません。これをしないで家庭裁判所でない場所で封を開けてしまいますと過料という制裁を受けることがあります。
また,自筆遺言書が封筒などに入っていない場合であっても,検認を受ける前に遺言内容を執行してしまいますと同じように過料の制裁を受けることがあります。

しかし,遺言公正証書の場合は,この検認という手続きを採る必要はなく,遺言者が亡くなった後いつでも遺言執行者が遺言の内容を執行することができます。

もちろん,遺言者が亡くなったことを遺言公正証書を作成した公証人に連絡していただく必要もありません。


ちょっと考えたんですけど,私が亡くなった後,誰も遺言公正証書があることを知らないまま時が過ぎるということもあるんじゃないかしら。
そうなると,せっかく作った遺言公正証書が仏壇の奥に眠ったまま役にたちませんわね。


そうですね。
かと言って,遺言書のある場所を教えてしまうと勝手に読まれたり,場合によっては,遺言を破棄されたりしまうこともありますからね。

このような場合であっても遺言を公正証書で作っておくと安心です。

そのようなご心配があれば,遺言公正証書で相続させたり遺贈する相手の方には,「私は,公証役場で遺言を作ってもらっていますよ。私になにかあったら公証役場へ行って遺言公正証書を見せてもらいなさい。」とおっしゃっておけばよろしいのではないでしょうか。


でも,それだけでいいんですか?
長男たちはそれだけで私が亡くなった後,私の遺言公正証書を探すことができるんですか?


平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば,日本公証人連合会において,全国的に,遺言公正証書を作成した公証役場名,公証人名,遺言者名,作成年月日等をコンピューターで管理していますから,すぐに調べることができます。

ただ,秘密保持のため,相続人などの利害関係人の方だけ公証役場の公証人を通じて照会を依頼することができることになっています。

ですから,遺言した方が亡くなったという事実の記載があり,かつ,亡くなった方との利害関係を証明できる記載のある戸籍謄本と,ご自身の身分を証明するもの(運転免許証等)を持参し,お近くの公証役場にご相談くだされば,遺言公正証書の有無,どこの公証役場で作成したかがすぐわかり,その公証役場で遺言公正証書を閲覧したり謄本などを手に入れることができます。

遺言公正証書の正本の交付請求権者は,遺言をなさった方御本人又はその承継人に限られています。閲覧請求や謄本の交付を請求するだけであれば,法律上の利害関係者にもこれらの請求権が認められています。
これらの請求をする際の必要書類等については公証役場にお尋ねになってください。


よくわかりました。

では,御説明いただいた遺言公正証書を作るために必要な書類を早速用意してまいります。

書類をお届けしてどのくらいで遺言公正証書をいただけるのでしたっけ。もう一度教えてください。

それから先ほど,遺言公正証書に私が署名押印するとおっしゃいましたが,印鑑はなんでもよいのですか?


書類をお届け願ってから1週間ほどで遺言公正証書をお渡しできますので,書類をお持ちになったときにお渡しする日にちを決めましょう。
そのときに証人お二人にも来ていただくよう手配しておきます。

遺言公正証書の案文ができたところで用紙の枚数もわかりますので,手数料等の明細を前もってご連絡します。

遺言公正証書をお渡しする当日は,実印を必ずお持ちください。これで押印していただきます。


最後にどうしてもお伺いしておきたいことがあるんです。

私がこのたび子供たちや友人,福祉団体に遺産を遺すことにした気持ちを私が亡くなった後,これらの人たちに伝えておきたいのですが,そのようなことを遺言に盛り込めるのでしょうか?


もちろんできます。

遺言をなさったお気持ちをみなさんにお伝えしたいとお思いになることは当然のことですね。
このような場合,遺言公正証書の最後に「付言」という項目を設けて遺言される方のお気持ちを加えさせていただいています。
もちろん,この分の手数料はかかりません。

遺産争いを戒めたり,これまでの感謝のお気持ちをご家族や友人の方に遺されたり様々な付言がございます。
どうぞ,十分お考えになって遺言なさったお気持ちなど思いの丈をお子様たちにお伝えになってください。


わかりました。
よろしくお願いします。