ケーススタディ 株式会社の定款認証の流れを教えてください
        定款のサンプルはありますか?

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依頼者 公証人


今度友人の二人と一緒に輸入雑貨販売の株式会社を設立したいと思っています。
会社関係の本を見ると,まずは定款を作って公証人に認証していただく必要がある,と書いてありましたので,どうしたらよいか相談に来ました。


まず定款についてご説明しましょう。
定款は設立しようとする会社の目的,内部組織,活動に関する根本規則です。言ってみれば会社の憲法みたいなものですね。
会社を立ち上げるにはまず定款の作成から始めなければなりません。
認証とは,一定の行為が正当な手続によりされたことを公の機関が証明することです。
定款の認証は,公証人の権限とされており,株式会社の定款については,公証人の認証を受けなければ効力を有しないものとされています。
 認証は,書面による定款の場合には,発起人が,公証人の目の前で定款に署名や記名押印をしたり,定款の署名や記名押印が公証役場に来る前に自分がしたものに間違いないものであることを説明していただいて,公証人がそのことを認証文に記載することにより行います。
ところで,定款には,通常のペーパーベースで作るものと電磁記録で作るものとありますが,どちらでお作りになるのですか?
それによって作成の仕方や認証の方法が違ってきます。


普通の紙で作って保存する定款を考えています。
電磁記録で定款を作ると何かメリットがあるのですか?

定款を認証するときには,公証人の手数料として5万円必要ですが,ペーパーベースの定款ですと,これに加えて定款の原本に4万円の収入印紙を貼らなくてはなりません。
電磁記録で定款を作って認証を受けますとこの収入印紙を貼る必要がないので,4万円安くなるというメリットがあります。

それは魅力的ですね。
でも,まだパソコンを揃えたりできませんので,ペーパーベースで定款を作ることにします。
定款にはどのような内容を盛り込めばよいのでしょうか


定款にはさまざまな会社の仕組みについての定めが盛り込まれます。
例えば
会社の目的
会社の商号
本店の所在地
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
発起人の氏名又は名称及び住所
といった事項は必ず定款に盛り込まなければならないことになっています。
この5つの定めのどれ一つ抜けてもその定款は無効となってしまいます。


私ども法律の素人にとっていきなり定款を作れ,と言われても途方に暮れてしまいます。
法律みたいな文章を作らなければならないのですよね。


確かにそうですね。
それでしたら司法書士さんや行政書士さんに定款を作っていただくという方法があります。
この方法ですと,専門家にお願いするわけですから早くて内容もしっかりした定款が作れると思います。
もし,ご自身で作ってみようとお思いなら,会社関係の書籍に定款の文例が載っていますからそれを参考にしながら作るのも方法の一つです。
また,日本公証人連合会のホームページに会社の規模などに応じたいくつかの定款の記載例が載っていますので,それをダウンロードしてご自身の会社の目的などに合うような定款を作られたらいかがでしょうか。
下のボタンをクリックしますと日本公証人連合会で作成した定款記載例をダウンロードできるページへ進むことができます。



わかりました。
日本公証人連合会で作った定款の記載例を手に入れて定款を作ってみます。
作った定款案を認証の前に見ていただけますか?


どうぞ,お持ちになってください。
司法書士や行政書士の方は,慣れていますのでいきなり定款を認証するだけの形にして持ってこられます。
でも,一般の方がいきなり定款を製本して持って来られても訂正しなければならない箇所がいくつもあったりしますので,できれば認証の前に定款の案をお持ちになっていただき,公証人の点検を受けることをお勧めします。
せっかく発起人の印鑑が押されてきれいに製本されていても訂正箇所が多いと作り直し,ということにもなりかねませんからね。
直接お持ちにならなくても電話連絡の上ファクスで送っていただいても,メール添付で送っていただいても構いません。
公証人が点検した結果を踏まえて,正式に認証を受ける形にした定款をお持ちになっていただければ認証もスムースに行えると思います。


そのようにさせていただきます。
でも,「正式に認証を受ける形」ってどのようなことでしょうか。


定款の内容が公証人の事前の点検を経て固まりましたら,それを3部作ってください。
なぜ3部必要かと申しますと
認証した公証役場で保管する原本用
会社の登記をするときに法務局へ提出する謄本用
会社が保管する保存用
というように使われるからです。
定款は,各ページごとに発起人全員の実印で割り印を押してください。
もし,市販の製本テープで製本される場合は,定款本体とテープにかかるように発起人全員の実印による割り印を1か所押していただければ結構です。
そして,定款末尾の各発起人の氏名の後にそれぞれの実印を押してください。
あと最後のページ欄外には発起人全員が実印で捨て印を押してください。
誤字脱字などがあった場合,この捨て印があれば訂正が可能です。
これと全く同じ定款を3部作ってください。
これで公証人の認証を受ける定款の形が整います。


定款の認証を受けるための必要書類を教えてください。
認証を受けるときは私ともう一人の発起人は公証役場に来れますが,あと一人は遠隔地に住んでいますので公証役場に来れないのです。
来れる発起人だけ来れば定款は認証していただけるのでしょうか。


よくそのように思われて発起人が何人かいるのにお一人だけが定款の認証においでになることがあるのですが,それではダメなんです。
定款の作成は,会社の設立に参加した発起人が相談しあって共に作成する大切な手続きです。
ですから,定款に発起人として記名押印されている方が間違いなく発起人として会社設立に参加されているのか,会社の目的や組織,運営形態にご自身の意思が反映されているのか,というようなことを公証人が発起人ご自身に確かめて認証をする必要があるのです。
そのため,原則としては発起人全員が公証役場においでいただいて定款の認証を受けていただきたいのですが,おいでいただけない方には代理人をたてていただき,委任状という形でご自身の意思を公証人に伝えていただく必要があるのです。


よくわかりました。
それだけ定款の作成は会社を設立する上で大切な作業なんですね。
遠隔地のため来れない発起人については,私が代理人になって認証を受けようと思っています。
定款の認証には,定款3通のほかどのような書類が必要なのでしょうか。


認証のときに公証役場においでになれる発起人の方は,各自の印鑑証明書と実印をご持参ください。
印鑑証明書は発行から3か月以内のものです。
おいでになれない方については,今ご説明したようにご本人作成の委任状とやはり印鑑証明書が必要になります。
当役場でお使いいただいている株式会社の定款認証用の委任状のサンプルが当役場のホームページにございますので,ご紹介します。
サンプルファイルは一太郎というワープロで作成されています。
委任状を作成する上でご注意いただきたいことも記載してあります。
お客様のパソコンに一太郎がインストールされていれば,左クリックするだけで中身を読むことができます。
委任状をお作りの際はこのファイルをダウンロードしてお使いくださって結構です。
一太郎のロゴを右クリックして 「対象をファイルに保存」 をクリックすればダウンロードできます。
WORDをお使いの方も同じ方法でダウンロードすればお使いになれます。

power-houjin.jtd へのリンク
ダウンロード用 閲覧用
                                                       
代理人の方には委任状のほか身分証明書をお持ちいただく必要があります。
発起人であるお客様が同時に代理人になられるということですので,お客様の印鑑証明書と実印で代理人としての身分証明は大丈夫です。
もし,認証のために公証役場においでになる発起人以外の方が代理人としてお見えになるなら身分証明書として普通次のいずれかを持参いただいています。

代理人の身分証明書,例えば次のどれかひとつ
印鑑証明書(実印をご持参ください)
運転免許証
パスポート
写真付きの住民基本台帳カード
人違いを避けるために,写真がついていない健康保険証や住民票ではだめです。


では,定款や必要書類を公証役場に持ち込んでから定款の認証手続きが終わるまでどのくらい時間がかかるのでしょうか。


公証役場の繁忙の度合いにもよりますが,公証人が定款や必要書類を点検して,何も問題がなければ,せいぜい20分から30分程度で認証した謄本と会社保存用の各1通をお渡しすることができると思います。
もし,定款の事前の点検なしに来られて訂正箇所などが出てくればそれなりの時間がかかります。

あと私どもで注意することがあるでしょうか。
そうですね。
東京都内の公証役場で定款の認証を受けるなら本店所在地が東京都内でなければなりません。
それから,先ほどご説明した4万円の収入印紙ですが,当新宿公証役場では備え置きがありませんので,認証においでになる前に郵便局でお買い求めになってください。

わかりました。
それから,発起人の一人に△△株式会社が加わるかもしれないのですが,発起人が法人である場合,なにか注意することがあるのでしょうか。


発起人が法人である△△株式会社の場合,定款の発起人記名押印欄には代表取締役の方に記名押印していただくことになります。
必要書類は,△△株式会社の
印鑑証明書
履歴事項全部証明書(法人登記の謄本)
が必要になります。
代表取締役の方ご本人が公証役場においでいただけるのであればこれらの書類をご持参いただけば結構です。
これらの書類は発行後3か月以内のものをご持参ください。
もし,代表取締役の代理人の方がおいでになるなら,これらの書類のほか,△△株式会社代表取締役の方が作成した委任状が必要となります。
作り方は先ほどのサンプルとほぼ同じで,委任者の欄が,個人から法人に変わるだけです。


公正証書の場合,委任状に付ける書類は代表者事項証明書でもよかったように思うのですが,会社の定款の場合はどうして履歴事項全部証明書が必要なんですか?


△△株式会社のような法人が発起人となる場合,会社を設立しようとする行為が△△株式会社の事業目的の範囲内でなければならないのです。
個人であれば,自由に事業目的を設定して会社を設立できますが,法人の場合はそうはいきません。
民法第43条に「法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」という規定があり,法人のできることは定款で定められた範囲内のことに限られるのです。
そのため,会社の事業目的が記載された△△株式会社の履歴事項全部証明書と認証を受けようとする定款の事業目的を公証人が見比べて,今回会社を設立しようとしている行為が△△株式会社の事業目的の範囲内かどうかをチェックさせてもらう必要があるのです。
いくつかある△△株式会社の事業目的のうち,一つでも設立しようとする会社の事業目的と重なっていればそれで大丈夫です。


わかりました。
△△株式会社も輸入雑貨の販売を事業内容にしていますから発起人になっても大丈夫だと思います。
それでは,定款案ができましたらお持ちしますので事前の点検をお願いします。

それから,別の件ですが,今度一般財団法人や一般社団法人の設立などについての法律が整備されたと聞きました。
私は,高校の同窓会の幹事をしていまして,同窓会を社団法人にしようではないか,という話が持ち上がっていますので今度ご相談にのっていただけますか?
そのときは,ひとつ電磁記録の定款の認証にチャレンジしてみたいと思いますので,これについてもご相談にのってください。


わかりました。
では,お待ちしています。